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清掃労働者死亡事故弾劾闘争

2014年10月8日、資源ごみを回収していた清掃労働者が頭を強く打って、1週間後の10月15日に死亡する事故が起きました。

 事故の原因は、道路交通法で禁止されているステップ乗車を行い、ごみ収集車から振り落とされて転落し、道路に頭を強く打ちつけたためです。ステップ乗車とは、ゴミを収集する労働者が、ゴミの収集地点から次の収集地点に移動するとき、清掃車後部のステップ台に足をのせ、清掃車につかまって移動することです。

 

 労働者が仕事中の事故が原因で亡くなるという、絶対にあってはならないことでした。

 

 ところが、習志野市は事故が起きたことすら隠ぺいし、「闇から闇」に葬り去ろうとしたのです。

 

 しかし、10月31日、『朝日新聞』朝刊で報道され、死亡事故が明らかとなりました。新聞の見出しは以下の通りです。

 

 「ごみ回収中事故 男性作業員死亡  習志野、ステップ乗車か」

 

 新聞報道によって、死亡事故が公になって以降、死亡事故を追及する闘いがまきおこり、恐るべき事実が次々と明らかになったのです。

 

 死亡事故を起こしたのは、習志野市資源回収共同組合に加盟している(有)熊倉商店で、代表の熊倉一夫氏は、宮本泰介習志野市長の後援会長でした。

 

 熊倉一夫氏は、習志野市防犯協会会長です。

 

 習志野警察署は、死亡事故の原因について「捜査中」としており、ステップ乗車が原因であると断定していません。警察が捜査中であることを理由に、習志野市も事故原因は不明としています。

 

 また、労働者死傷報告書が労働基準監督署に提出されたのは、11月14日でした。

 

 こうした事実から浮かびあがるのは、宮本市長と熊倉商店と習志野警察署の「鉄の三角関係」です。道路交通法で禁止されているステップ乗車を行って死亡事故を起こしたことが明らかになれば、当然にも熊倉商店の責任が追及されます。そして、資源ゴミの収集を委託してきた習志野市の責任も追及されることはもとより、法律違反を行ってきた人物が宮本市長の後援会長であることは、2015年4月に行われる市長選挙を直前にした当時、非常に都合が悪いことになります。さらに言えば、習志野市の防犯協会会長が法律違反を起こして死亡事故を起こしたことが発覚したら、習志野市警察署にとってもその責任が問われることになります。

 

 ここで、3者の利害は一致しました。

 

 誰が見てもステップ乗車が原因で清掃車から振り落とされて、頭を強く打って死亡したことが明らかにもかかわらず、事故原因は「警察による捜査中」とし、そのことをもって、習志野市は「事故原因不明」として、熊倉商店の責任は問わないということです。しかも、仕事中の事故が原因で亡くなったにも関わらず、労働災害の手続きさえせず、死亡事故を「闇から闇」に葬ろうとしたのです。

 

 しかし、『朝日新聞』の報道で、死亡事故が明らかとなり、3者の思惑は破綻しました。死亡事故を弾劾する声がまきおこり、習志野市議会でも問題になったのです。

 

 何よりも大問題なのは、「労災かくし」という犯罪が行われたことです。事故が起きたのが10月8日で、労働者死傷報告書が労働基準監督署に提出されたのは11月14日でした。実に、1カ月以上経過しています。

 

 労働基準法施行規則第57条及び労働安全衛生法規則第97条では、事業者は労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく、労働者死傷報告等を労働基準監督署長に提出しなければなりません。ところが、熊倉商店と習志野市は、事故が起きてから1カ月以上が経過してから、労働者死傷報告書を労働基準監督署に提出しているのです。

 

 この点は、2014年12月の習志野市議会でも追及されました。市議会で、クリーン推進課の職員は「事故があった日に労働基準監督署に話をした、と報告を受けている」と答弁しました。

 

 ところが、労働基準監督署に問い合わせしたところ、労基署は「事故の当日に話はなかった。事故の話が労基署にあったのは、(『朝日新聞』による)報道された数日前」と回答したのです。

 

 『朝日新聞』が死亡事故について、習志野市や熊倉商店を取材し始めたことで、死亡事故を隠ぺいすることができなくなったと判断し、あわてて労働基準監督署に相談に行ったのです。

 

 習志野市議会で、市はウソの答弁を行っていたことが明らかになりました。

 

 また、労働基準監督署に問い合わせしたところ、葬祭料と遺族補償の申請がされていないことも明らかになりました。

 

 労働基準法80条(葬祭料)では、「労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の六十日分の葬祭料を支払わなければならない」とあります。

 

 また、労働基準法79条(遺族補償)では、「労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない」とあります。

 

 死亡事故を隠ぺいしようとしていた10月段階ではなく、労基署に労働者死傷等報告書を提出した11月以降も、なぜか労基署に葬祭料と遺族補償の申請がされませんでした。

 

 ここから明らかになるのは、熊倉商店は労災保険に加入していなかったのではないか、ということです。労働者を一人でも雇用する場合は、事業主は労災保険に加入する義務があります。労災保険に加入もしていない企業に資源ゴミの収集を委託し続けたとすれば、習志野市の責任もきわめて重大です。

 

 死亡事故の直接の原因は、ステップ乗車にあったとしても、真の原因についてはっきりさせる必要があります。清掃労働者死亡事故弾劾闘争の中で浮かびあがってきたのは、習志野市と習志野市資源回収共同組合の利害関係です。

 

 習志野市議や市民の調査によると、習志野市と習志野市資源回収共同組合は、年間3億7千万円の随意契約で、①粗大ゴミ・資源物等の中間処理業務委託、②資源物収集運搬委託、③可燃物収集運搬委託の廃棄物処理業務契約を行っています。

 

 これに加え、集まった「粗大ゴミ・資源物等」を、習志野市が資源回収共同組合に格安で売却し、回収共同組合が最終処分業者に高く売って、利益を得ていることが指摘されています。

 

 つまり、習志野市資源回収共同組合は、①随意契約によって億単位の委託料金を習志野市からもらっていることに加え、②資源物を処理することによってさらに利益を得ているのです。

 

 まさに、「ゴミ利権」ともいえる癒着関係です。

 

 実際、熊倉商店の社長・熊倉一夫氏と市の幹部が10年間にわたり、市の税金を使って視察と称した中国旅行を行い、大宴会を行っていたことが習志野市議会で追及され、2014年から中止になっています。「ゴミ利権」を維持するために、市の幹部を税金を使って接待し、不当な利益を上げ続けていることが問題となっています。

 

 しかも、習志野市資源回収共同組合の本社事務所と言われている場所には、小さなプレハブ小屋が建っているだけで、人の気配もなく事務所としての機能が全くありません。この点について、2015年9月の習志野市議会で問題になっていますが、担当職員は「当該事務所には電気の配線がされている。事務所内には机が置かれている。クーラーボックスもある。組合事務所は茜浜3-4-10である」と答弁し、あくまでも本社事務所と言い張っています。

 

 こうしたことから明らかになるのは、清掃労働者死亡事故の真の原因は、本来市が直営で責任をもって行うべきゴミの収集という仕事を民間業者に外部委託していることにあります。

 

 死亡事故を起こした熊倉商店は、『朝日新聞』の取材に対して、「ステップ乗車はしないように指導していた」と言っています。

 

 しかし、危険なステップ乗車をせざるを得なかったのは、少ない人数で大量のゴミを限られた時間で収集しなければならず、時間に追われていたからです。

 

 習志野市からゴミの収集を委託された民間業者は、労働者の人数を削減し、賃金を抑えることによって、市からの委託料を少しでも、自分たちのふところにいれて、金儲けしようとします。大量の仕事に対して、少ない人数と低賃金。労働者が安心して働くこともできず、労働災害が続出することになります。世界中で蔓延している民営化・外注化の現実そのものです。

 

 しかも、外部委託していることによって、事故の責任を委託した業者に押しつけることになります。今回の死亡事故は、市長の後援会長が引き起こしたために、熊倉商店の責任は追及されませんでしたが。

 

 2016年3月の習志野市議会で、「今回の事故で安全対策に問題があったのではないか?」との質問に、石井クリーンセンター所長は「今回の事故については、安全管理の部分で足りなかったところはあると考えております」と答弁しました。

 

 ところが、宮本市長がたちあがり、「今のは訂正でございます。まだ原因が特定されておりません」と答弁し、担当部署の責任者が認めた「安全管理の部分で足りなかったところはある」という考えを訂正=撤回したのです。

 

 事故の責任から徹底的に逃げ回る宮本市長。労働者が仕事中の事故が原因で死亡しているのに、安全管理が足りなかったことすら認めない宮本市長の姿勢に、民間委託によって事故の責任から逃げ回るあり方が端的に示されています。

 

 清掃労働者死亡事故が大問題化する中で、宮本市長は「5分でできる作業を4分でしよう」などという市長訓示を行いました(2月3日)。

 

 これは、「1時間でできる作業を48分でしよう」「2時間でできる作業を1時間36分でしよう」ということになります。ゴミ収集に引き付ければ、「今までは2時間かかけてゴミ収集していたのを、1時間36分でやれ」と言っているに等しいことです。まさに、ステップ乗車をやってでも、早くゴミを収集しろ、と言っているようなものです。こうした合理化のあり方が労働者の命を奪ったのです。合理化、そのための外注化(外部委託)と闘わなければ、労働者が殺されるのです。

 

 労働者が仕事中の事故が原因で死亡したことは、労働組合にとっては真っ先に取り上げるべき問題です。しかし、習志野市労連は、清掃労働者死亡事故について、文字通り一言も問題にしませんでした。本来なら、団体交渉を行い、すべての事実を明らかにし、習志野市や熊倉商店の責任を追及し、労働者が安心して働けるように闘うのが労働組合の存在意義です。

 

 習志野市労連が全く問題にもしない状況や、有志として清掃労働者死亡事故を問題にすることの限界の中で、闘う労働組合が習志野市に絶対に必要だという思いはますます強くなりました。

 

 清掃労働者死亡事故弾劾闘争は、ユニオン習志野結成に向けて、最後の背中を押しました。もう二度と、労働者が殺されてはならない。いまだに死亡事故の責任が問われていない。いまだに、随意契約で不当に利益を上げ続けている連中がいる。労働者に低賃金と労働強化が強制されている。

 

 闘う労働組合をつくって、労働者の団結した力で労働者の命や安全を守らなければなりません。清掃労働者死亡事故を絶対にあいまいにしないためにも、ユニオン習志野結成に踏み出しました。

 

 清掃労働者死亡事故弾劾闘争は、ユニオン習志野結成の重要な原点となる闘いです。

 

全世界の労働者は団結しよう!

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